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日本(かつていた場所)から遠く離れる必要があったあなたへ

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■あの島国を飛び出して、海を渡った時。あなたは最初にどんな感情を味わいましたか?

何年前になるのでしょうか。その時のことを、きっとあなたは今でもはっきりと思い出せるのではないでしょうか。わたしはそう想像します。

「不安以上に、自由とものすごい解放感

「日本よりずっと生きやすい

楽しくて、この先が楽しみでたまらない」

あなたはその時どんな感情を味わいましたか?

■海外で出会ういろんな日本人

海外で暮らしていると、現地で魅力的な日本人と出会い、お話する機会が少なからずあります。海外で身を立てて、長く暮らしている方に出会う時、まぶしいエネルギーに触れることがよくあります。その方が他の人と向き合う時のおおらかな姿勢、パワフルな考え方、唯一無二の個性的な歩み、ベースにある陽気さ、好奇心いっぱいで話してくれるその方の専門性、楽観的な世界観、豪快な笑い声とともに、知性ある冗談をいう姿を前にしながらふと思ったものです。「この人の魅力は地球サイズ。きっと日本列島には収まりきらなかったんじゃないなぁ」なんて。心地いいその人らしさに触れながら、聞くお話の端端に、その方がこの異国の地で歩んできたであろうここまでの道のりにいとおしさを感じるような時間をもつことがたびたびありました。 

■日本から離れても、引き戻されてしまう自分のルーツ
現地でしっかり日本人会に属して日本コミュニティにコミットしながら生きている方から日本食レストランに顔を出す程度であったりと、濃淡はあれども日本人同士のつながりを有している方がいる

 

その一方で、日本人、日本文化との交流をできるだけ絶つ形で現地になじもうとしている、そうしてきた方を見かけることがあります。そんな方であっても、現地の友人知人からは日本・アジアに関する疑問を投げかけられる場面は多いのではないでしょうか。漫画やアニメ、食事やファッション。何気ない問いを受けて、日本文化の何かを説明したり紹介する場面は一度や二度ではないでしょう。まるで日本代表・アジア代表として答えを求められているかのような場面。

異文化の輪の中で、自分が望もうと望むまいと「あなたは日本人」として相手はあなたを見ることで、日本に強く引き戻されるような場面に満ちているのではないでしょうか。ご自分の中で日本をないことにしようとしていたならば、より一層、生まれ育った国は存在感は増して、意識させられてしまう。その不思議を経験されたことはないでしょうか。

集団主義社会・日本で育ってきた自分は、ヨーロッパの個人主義社会で暮らす中で、自分の中の常識や当たり前が揺さぶられるのを感じる場面でも。異文化が日本よりポジティブに素敵に見える場面でも、ネガティブに感じられる場面でも、比較の対象として自分のベースになっているのは日本であることを強く感じることでしょう。

■海の外に出ることで、あなたが自分に与えてあげたかったものは何ですか?

あなたが海の外に出てくるきっかけはどんなものでしたか?海外で暮らすという選択肢をあなたが知る機会となったのはどんな出来事だったのでしょうか。日本で暮らしていた頃に「海外で暮らしたい」そんなあなたの夢を応援してくれたのは誰だったでしょうか。あなたの考えや思いを否定するような人たちはあなたの周りにどのぐらいいたでしょうか。夢の実現のために、周りの人を説得するような場面はあったでしょうか。

向い風に負けず、強い意志によって海外生活を希求したであろうあなた。「それを望むことで、あなたは自分自身に何を与えたかったのでしょうか」海外で暮らすこと。それはあなたにとってどんな意味があるのでしょうか。「日本を出ることで本当に変えたかったものは何?」考えてみたことはありますか?

■あの島国から遠く離れたかった。離れる必要があった。それを叶えたあなたの行動力はあなたの素晴らしいストレングスでしょう

「かつてあなたがいた環境から、何が何でも離れないと自分ではいられない気がした」そんな思いがあったことを思い出された方がいるのではないでしょうか。その場所で受ける影響から自分を守るために、距離を取る必要があった。

あなたは、必要なものを自分自身に与えてあげる力がある方です。自ら機会を作り出し、自分に提供することができる。自ら望んだものを実現させる素晴らしいパワーをお持ち方。生きる力が強い方と言えるのではないでしょうか。これはあなたのストレングスです。

「ここじゃないどこかへ」そんな気持ちで飛び出てきたのが海外生活の始まりだった。そんな始まりを思い出すあなたへ。このページは、そんな方に向けて書いています。

■「~からの自由」と「~への自由」フロムのいう2つの自由:消極的自由と積極的自由

ドイツの社会心理学者E.S.Frommは名著「自由からの逃走」の中で、自由は2種類あると言っています。

ひとつめは消極的自由「~からの自由」で、社会的、政治的、文化的制約からの解放を求めての自由です。

これと対になるのが、ふたつめの積極的自由「~への自由」です。この積極的自由の状態とは、自己とアイデンティティを表現している状態であり、つまり自分自身である状態であると言います。自らに由(よ)る=自らに基づく=自由という単語の成り立ちそのものの意ですね。

フロムはこう続けます。消極的自由「~からの自由」とは「ここではない、どこかへ」他者からの干渉から逃れるのが目的であり、主体性無き自由。それには、孤独感や無力感といった耐え難い感情が伴い、新しい依存と従属を求めてしまうのだと。

■どんなに離れても離れられない「ここにはないはずのそれ」の存在。

どんなに空間的、地理的距離をとって、経済的に独立したとしても。日本とは全く違う気候、街並みを歩いていて、街ですれ違う人たちはまったく自分とは異なる人種というような世界に身を置いていても、自分を一瞬で「そのこと」に引き戻し、「そのこと」で頭をいっぱいにしてしまうような「ここにないはずのそれ」「不在の存在」に影響を受け続けているのを感じることはあるでしょうか。

それは今の暮らしの至る所に立ち現れてくることでしょう。何度も繰り返し再現してしまう人間関係の中に。望んでいるわけではないのに、自分を大事に扱ってくれない人ばかりを選んでしまう不可解な事実の中に。

どこにいようが「自分でしかいられない」ことを思い知らされる。離れてもなお、それをないことになどできないと思い知らされるまでに、そのものからの影響力を感じる。それをコントロールできない自分に無力感を感じることもあるでしょう。そして「この先に進んでいくためには、それに向き合うことを避けては通れない」そんな直観のような考えが頭を離れない、それをなかったことにはできないと感じてらっしゃる。

あなたにとっての「そのこと」とは、いったい何なのか。あなたはきっとご存じでしょう。

原家族のこと

親との関係

なくしてしまった大切なもの

引き受けがたい感情が伴う過去の出来事

など。人それぞれのひっかかり。あなたは何がひっかかっていますか?
 

今のあなたの居場所で、あなたが自ら築き上げて手に入れた安心・安全な暮らしにしっかりと軸足を置きながら、ここまでのあなたの豊かな経験と、必要なものを自分に与えてあげられるあなたの元来の強みを味方につけながら。

いつまでもあなたを、かつてのはるか遠くへと引き戻す「そのこと」について、一緒に触れてみませんか。

それに向き合うことによって、あなたをひとつに統合させることができるかもしれません。そういう時期が来たということなのではないでしょうか。

この場所をもっと深く味わえるように。あなたが今を十全に生きることを楽しめるように。繰り返してしまう​生きづらさを、崩れてしまっているように感じられるバランスを、胸の真ん中にいつもある、何かを欠いている穴、空白を。ここでそれらに触れていき、あなたの中に統合させることは生きやすさにつながるでしょう。あなたのテーマを一緒に、紐解いてみませんか?

ひとりで抱えるには苦しみが大きすぎる。そんな時は聞き手として、隣であなたの気持ちに一緒に触れることで、何かお手伝いができるかもしれません。ご連絡ください。

今日は選択日和 いのうえ

参考著書:
*E.S.Fromm(1941)

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